不動産投資をするにあたって、大部分の方が金融機関より融資を受けて物件を購入されると思います。
ローンを組むことで、自己資金を使わず、レバレッジを聞かせて大きな資産を残せることこそが不動産投資のメリットです。
ただしお金を借りる以上は、毎月金融機関に一定額の返済をしなければなりません。
もちろんその返済は入居者からの家賃収入で賄うのですから、空室等の事情で賃料の入らない場合も想定しなければなりません。
1部屋2部屋程度の空室であれば、給与からの補填で何とかなる程度かもしれませんが、投資規模が大きくなり、且つ同じ割合で空室が増えていくと、最終的に支払いができなくなってしまう可能性も大いにあります。
では、実際に不動産投資において借金(ローン)の支払が出来ない状況に陥ってしまうと、最終的にどうなってしまうのでしょうか?
目次
ローンが支払えなくなったら
金融機関とのローンの契約を「金銭消費貸借契約」と言います。
融資を受けて物件を購入したことがある方ならば、既にこの契約書にサインをしているはずです。
で、この契約は「期限の利益」によって成立しています。
「期限の利益」とは約束した期限が来るまでは借金の返済はしなくてもいいよー、という債務者の権利です。
一定期限の中で分割返済できるという権利でもあり、金融機関はこの権利を債務者に与える代わりに金利を取ることができるという考え方です。
債務者がローンの支払が出来ないとなると、この「期限の利益」は喪失となる訳ですね。
これを「期限の利益の喪失」と言います。
そうなると、金融機関は債務者にローンがいくら残っていようが、貸したお金を一括で返済してください、と言えるようになります。
借りる金融機関にもよりますが、多くの金融機関は3か月~6か月程度で期限の利益の喪失となることが多いようです。
そうなると、金融機関より「期限の利益の喪失通知」が届きます。
当然お金を借りた方としては、一括返済を迫られても返済できるはずもありません。
毎月の支払が出来ないほど困窮している状況なのですから。
そうなると、多くの場合、保証会社から金融機関に対して債務の返済(借金の肩代わり)が行われることになります。
これを代位弁済と言います。
お金を借りた方としては、「保証会社が俺の借金肩代わりして払ってくれたから、もう借金払わなくていいじゃん!」とはなりません。
保証会社が債務者の借金を肩代わりしているわけですから、今度は保証会社から肩代わりした分の借金の返済を迫られることとなります。
債権者が金融機関から保証会社に変わっただけです。
債権者が変わろうが、払えないものは払えないですよね。
払えないからこそこういった状況になっているわけですから。
で、その状況をそのまま放っておくといずれ「競売」となります。
「競売」とは
債務者が住宅ローンの返済をしない、出来ない時、債権者が裁判所に申し立てをすることによって、担保物件の差し押さえをして、裁判所の権限によって強制的に売却をし、その売却代金から支払いを受け、債権の回収をする手続きです。
一般的に、この「競売」は市場価格よりも安く売却されてしまう傾向にありますから、当然売却代金で賄えない残りの借金分も大きくなる傾向にあります。
ではできるだけ市場価格に近い金額で売却する方法はないのでしょうか?それこそが「任意売却」なのです。
「任意売却」とは
競売により、安い金額で買いたたかれてしまうのを避けるための救済措置のような取引です。
任意売却の専門業者が債権者と債務者の仲介をして、売却を進める形になります。
原則、ローンの残債を全額完済しないと、抵当権の抹消はできません。
つまり、ローン支払いに行き詰まる人のほとんどが「ローン残債>売却価格」という債務超過の状態なわけです。
物件を売ってローンを返したいけど、売却代金が低くて全額完済できない、債権者としては全額完済してほしいけど、それは無理そう・・・
だとすれば、出来るだけ高い金額で売却して、1円でも多く債権(ローン)を回収し、被害を最小限にとどめたいですよね。
当然抵当権者(金融機関や保証会社)との交渉になり、抵当権者の認めてくれる範囲内の売却価格で抵当権を抹消してもらうことができるようになります。
当然競売よりは高い金額で売却できる傾向にあるので、売却代金で賄えない残りの借金分も小さくなる傾向にあります。
残った借金はどうなる?
「競売」でも「任意売却」でも、物件を売却しても残ってしまう借金はどうなるのでしょうか?
のこった借金に関しては基本的に債務整理の流れが一般的であります。
債務整理というと借金が無くなる?的なイメージをお持ちの方も多いですが、債務整理にもいくつか種類はあります。
債務整理の4つの方法
任意整理
任意整理とは、弁護士や司法書士が代理人となって債権者と交渉し、債権者と債務者の折り合いの付く借金額に減額し、返済方法を決定していく手続きとなります。
4つの手法の中で唯一、裁判所と関わらずに手続きが進められます。
また、車のローンはあるけど車は使い続けたい!などという場合にはその車のローンは残して、他の借金を任意整理する、などの手法も取れます。
しかしながら、対象はあくまで金融機関などから借り入れしたお金に限定されます。
例えば、税金の滞納や罰金などには適用できませんのでご注意ください。
メリット
- 利息がカットされ、元金のみを返済する(毎月の返済が減る)
- 直接的な督促や取り立てがなくなる
- 借金返済の見通しが立つ
利息部分をカットできるので、毎月の返済は確実に少なくなります。
デメリット
- 返済が0円になるわけではない
- 信用情報にブラックリストとして登録される(クレジットカードなどは作れない)
任意整理をすると約5年間は信用情報機関に記録されます。
その期間中はクレジットはもちろんローンを組むこともできません。
個人再生
個人再生とは、自己破産と任意整理の中間のような制度です。
自己破産と同様に裁判所に申し立てをしますが、自己破産のようにすべての債務を免責するという訳ではありません。
債務を大幅に免責(5分の1~10分の1程度)にしてもらって、任意整理のように、長期の分割払いにしてもらう、という制度です。
減額幅は、任意整理よりは大きくなる傾向にあります。
官報と呼ばれる政府の広告紙に名前が記載されます。
任意整理同様に自宅を手元に残しておくこともできます。
メリット
- 借金の元本を5分の1~10分の1に減額できる
- 借金の理由を問われない(例えばギャンブルなど)
- 一定条件を満たすと、自宅などの資産は手元に残すことも可能
- 就業制限がない
- 差し押さえの停止をすることが可能
- 直接的な督促や取り立てがなくなる
自宅のローンがある場合でも、住宅ローン特則によって、ローンを返済しながら住むことは可能です。
自己破産などをすると、一部の仕事への就労制限がかかりますが、個人再生であればそれらの就労制限はありません。
デメリット
- 手続きが煩雑で費用が多くかかる
- 信用情報にブラックリストとして登録される(クレジットカードなどは作れない)
- 官報に掲載される
- 借金返済対象
自己破産と違って全ての借金が無くなるわけではありませんから、減額された借金の支払いは継続して続けなければなりません。
自己破産
自己破産とは、裁判所に「破産申立書」を提出して「免責許可」をもらって、全ての借金をリセット(ゼロに)するという手続きです。
破産ができるのは、「支払い不能」となった場合です。
支払い不能というのは、債務者の負債の額、収入、資産等の状況から総合的に判断されますので、一概に全員が申し立てをすれば認められる、というものではありません。
官報と呼ばれる政府の広告紙に名前が記載されます。
価値のある財産は全て処分しなければなりません。
メリット
- 原則、全ての借金なくなります(一部の債務は残る場合もあるので注意)
- 生活に最低限必要な物は残せる
- 無職や生活保護者でも自己破産できる
- 直接的な督促や取り立てがなくなる
任意整理でも債務整理でも厳しい人が最終的に選ぶ手段です。
原則として、借金の返済義務がなくなりますので、メリットは非常に大きいと言えます。
また、自己破産後に取得した財産は処分されません。
デメリット
- 一定価値以上の財産は処分される
- 手続き中は職業や資格に就労制限がある
- 信用情報にブラックリストとして登録される(クレジットカードなどは作れない)
- 保証人や連帯保証人が借金の返済を迫られる
自己破産の効果はあくまで、本人のみ限定されます。
保証人や連帯保証人を通して借金している場合は、その人たちに借金返済の請求がいくことになります。
持ち家や車なども基本的に処分されることになります。
特定調停
特定調停とは弁護士などに依頼せず、借金をした本人が簡易裁判所に申し立てを行う債務整理の方法の1つです。
本人の希望で、弁護士を代理人とすることも可能です。
財産などの没収もなく、自分でやれば弁護士への費用支払いもないので他の方法よりも費用が安くすみます。
また、任意整理のように整理する債務を選択することができます。
メリット
- 自分で手続きできる
- 費用が安い
- 直接債権者と交渉しなくてすむ(調停委員が主導)
- 直接的な督促や取り立てがなくなる
- 借金の用途は問われない(ギャンブルなど)
- 財産を没収されてしまうことが無い
本人主体で行える手続きです。
また、調停委員会が主導になるため、債権者と本人が直接交渉する必要もありません。
デメリット
- 希望通りに借金が減らない可能性もある
- 手続きが面倒
- 結局個人再生や自己破産へ移行することも
調停がそもそも成立しない可能性もあります。
その場合は結局個人再生や自己破産の手続きへ移行するため時間的なデメリットもおおく、また最も重要なポイントとして、借金が思ったほど減らない、などのリスクも考えられます。
必ずしも債務者に有利な結果になるとは限りません。
サービサーとは?
サービサーとは、「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」に基づき、法務大臣から営業許可を得ている民間の債権回収専門会社です。
金融機関などから債権回収業務の委託を受けたり、その債権を譲り受けて管理回収を行っています。
簡単に言えば、お金を支払ってもらう権利をこのサービサーが金融機関から購入しているのです。
そうなると、今度はそのサービサーとの借金の残金の交渉となります。
サービサーとしては安値で債権を買い取っているわけですから、最低でもそれ以上の金額で回収できなければ事業が成り立ちません。
例えば借金の残りが300万円だったとしましょう。
その債権がサービサーに20万円で売却されたとします。
そうなると、サービサーとしては300万回収できる権利を持っていますが、最低でも20万以上回収ができれば一応黒字となる訳ですね。
サービサーも当初から満額の300万円を回収できるとは思っていません。
一般的に、最終的なサービサーとの和解金額は債権額の10%から15%程度(上の例でいうなら30万~45万程度)で落ち着くことが多いようです。
まとめ
不動産投資、マンション経営などで検索すると、失敗、借金、破産などのネガティブキーワードも非常に多く目につくと思います。
当然金融機関から借り入れをする以上はそういった最悪の事態も想定しておかなければなりません。
ただし、あまりに最悪な自体ばかりを想定していても、イメージでの恐怖に足を引っ張られて、投資としての合理的な内容判断が出来なくなってしまうのも事実です。
このブログで過去に何度もお話ししていますが、不動産投資は、物件や立地などがしっかりと選定できれば、非常に失敗しにくいビジネスモデルなのであります。
※その理由はこちらの過去記事を参照してください。↓
今回の記事でもご理解いただけたかと思いますが、「不動産投資で借金=破産」ではありません。
そうなるまでにはいくつものステップや救済措置もあります。
また、実際に払えなくなる前に、所有物件の収支改善や入居付けの工夫など、できることはたくさんあります。
このブログで過去にお伝えしていた「借り換え」などはその収支改善の最たるものです。
毎月の持ち出しで困っているかたが、低金利に借り換えたことにより、毎月持ち出しが減るどころか、一気にキャッシュフローがでてしまうような事例も多くあります。
※過去の借り換え事例はこちら↓
収支改善、借り換えをお考えの方は以下のお問合せフォームよりご相談下さい。