皆さんは賃貸併用住宅って聞いたことありますか?
分かりやすく言うと、自宅のマイホームと投資物件としての賃貸アパートを一緒にくっつけて建てた物件です。
メリットとしては、賃貸アパートからの収入で自宅のローン返済が賄えるので、賃貸併用住宅を建てたとしても、経営が上手くいけば実質毎月の支払が0円、場合によっては毎月収入を受け取ることも可能というまさに「夢のようなお話」です。
ただし、実際にはそんなに甘いものではありません。
中にはそのスキームで上手くいっている人もいるようですが、少なくとも私が今まで出会った大家さん達の中では良い話を聞いたことがありません。
今日は、そんな謎の多い「賃貸併用住宅」の危険性について解説していこうと思います。
まず、賃貸併用住宅を建築する大前提として、一般の住宅よりも規模が大きくなる分、多額の自己資金とより多くのローンを組める「与信能力」が必要となってきます。
※与信能力に関しては以下の記事をご覧ください。
なので、自己資金が全く無かったり、個人属性が低く1憶程度のローンが組めないような方ですと、そもそも検討しても無駄(最初から買えない)になってしまうので、先ずは自分自身がそれだけの与信能力があるのか否かを把握したうえで、ご検討されることをお勧めいたします。
目次
賃貸併用住宅が失敗・破綻しやすい5つの理由
①そもそも立地が微妙、それでサブリース契約ならもっと最悪
例えば、ワンルームのいくつか付いた賃貸併用住宅を建築しようと考えますよね。
そうなれば、入居ターゲットは単身者になります。
ということは単身者が好むような地域に物件を建築しなければならないです。
そうなると「駅近」になりますよね。
ただし、そもそも駅近だと、マンションやビルテナントが多く、容積率も高く取れるような地域にわざわざ賃貸併用の戸建てを立てる人はいないでしょう。
また、価格も高く、そもそも「買えない」という可能性も高いです。
こういったことを考えていくと、建築場所は駅から少し離れた住宅街になりますよね。
ワンルームだと賃貸需用が微妙になってきますし、ファミリーを建築するにしても、入居付けが難しいのは言うまでもありません。
(※ファミリーがマンション投資に向いていない理由はこちらの記事をご覧ください。)
しかし、その逆に都心駅近のワンルームは非常に入居付けがしやすいので、投資にお勧めです。
また、近年問題になってる家賃保証(サブリース)などには十分に気を付けてください。
大した需要もない土地に賃貸併用住宅を建てさせられて、向こう数年間は満額の家賃保証をしその後は手のひらを返したように、保証額の減額、又は一方的な打ち切りなどの詐欺まがいの手口も横行しております(とはいっても実際には通常のサブリース契約で詐欺ではないが)。
そもそもサブリースはお勧めできません。
その理由は過去のこちらの記事をご覧ください。
②入居者を付けづらい。
基本的には2~3階建ての木造建築の建物が多くなります(RCだと値段が高くなるので、自宅と数部屋作る程度の物件だとスケールメリットが合わない)。木造となれば、騒音問題も考えなければなりません。
入居側からすれば、オーナーと一緒に生活空間を共にするわけであるから、嫌でもオーナーを意識することになるでしょう。
「嫌なオーナーだったらどうしよう」
「この時間にゴミを題しても大丈夫かな?」
「この時間に人を入れても大丈夫?」
「少し騒いだだけで怒られそう」
など。「大家」がすぐ真横にすんでいると考えると、ちょっとしたことでも気を遣わなければならないような気がして、息が詰まりますよね。少なくとも私ならそう考えます。
分かりやすく言えば、通常の「独立型の賃貸物件」と「オーナー同居型の賃貸併用物件」が同じ条件で空室だった場合、多くの方が前者を選ぶということです。
③トラブルに巻き込まれる可能性が高くなる。
例えば滞納などの賃貸トラブルをより身近で感じることになります。入居者のトラブルは言い換えればオーナーのトラブルです。通常の賃貸なら、管理会社に一任すればいいですが、併用住宅だと嫌でもその入居者と顔を合わせることになるになります。
トラブルを起こしている入居者と同じ屋根の下に住むというのはあまり気持ちの良いものではありませんね。
入居中のトラブル(水漏れ・設備の故障など)に関しても、管理会社を通さず、直接頼られる可能性もありますしね。
また、賃貸部分を1Rなどで作る場合には、そこに住む人(単身者・独身者)とオーナー(ほとんどが家族持ち・子持ち)との生活リズムのズレが大きなストレスとなる場合も考えられます。
変な入居者なんて入れた日には大変ですね。入居者は借地借家法で保護されているので簡単に退去させられないですし、自分の持ち家でもありますから簡単に引っ越しなんてできませんよね。
④売却しづらい。
自宅部分は家賃収入がないわけですから、物件価格に対しての収益性は低くなります。
そうなれば当然利回りも低くなってしまいます。
それが故に融資もおりずらい。なので通常の一棟アパートなどより安値にならざるを得ません。
月の支払が家賃で賄えたらいいなあ、的な軽い考えだと失敗しやすいです。
自宅部分は収益物件とみなされないのに、建物価格は高くなるから、金融機関からの評価は低くなります。
金融機関から評価の出ない物件は転売も難しいのです。
通常の住宅が欲しい人にとっては「賃貸部分が邪魔」
賃貸物件(投資物件)が欲しい人にとっては「自宅部分が邪魔」
結局はどっちつかずの半魚人のような物件が手元に残ってしまうのです。
⑤信用毀損により、今後の拡大ができない
上記の理由により、収益性の低い物件を多額のローンを組んで購入したとみなされ、それが与信の毀損となります。
もちろん積算評価も低くなりますね。それが故に今後新たに収益物件を購入しようとするときに、賃貸併用住宅が足を引っ張り、物件拡大できなくなる可能性が高いです。
まとめ
「ただでマイホームが手に入りますよ」「マイホームを建てても毎月の支払は0円です。むしろ毎月お金が入ってきますよ」などといった甘い誘いの裏に、多くの危険性が潜むことをご理解いただけましたでしょうか?
不動産投資の面談をしていると、賃貸併用住宅に関する質問を多く受けます。
ただし、上記の5つの理由から全くお勧めできません。
やはり、賃貸は賃貸。自宅は自宅で考えるべきです。
なぜなら入居者が賃貸で望むものと、持ち家の自宅で望むものには差がありますから(住環境、間取り、周辺施設など)。
だからこそ、 マイホームと賃貸物件を併設した「賃貸併用物件」は入居者と購入者の異なる需要をどちらも中途半端にしか満たせない物件でもあるのです。
投資としての賃貸物件ならばやはり都心ワンルームの右に出るものはありません
⇒ワンルームマンション投資とは?その全容をこの1記事で徹底解説!
ワンルームマンションは購入して住む人がいない分、皆が賃貸でお部屋を借ります。
よって、ターゲットを明確にできます。
ターゲットの明確性こそがワンルームの入居需要の下支えとなっているのです。