大規模修繕工事はマンション全体の経年劣化に合わせて実施する計画的で大規模な修繕工事のことをいいます。
マンションは長く安全に使うために定期的にメンテナンスが必要となります。
投資用のワンルームマンションももちろんこの大規模修繕が周期的に行われます。
今回はそんな大規模修繕の工事周期やそれにかかる費用、そして工事内容にいたるまで詳しく解説していきます。
※動画で詳しく解説しております。
目次
マンションの大規模修繕の周期は何年?
マンションの大規模修繕工事の周期は約12~15年周期です。
以前は国土交通省のガイドラインで12年周期となっていましたが、令和3年9月にガイドラインが改訂され、周期には一定の幅を持たせる記載となりました。
これらの事実より、正しい大規模修繕工事の期間は12年~15年であるといえます。
長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の見直しについての報道発表資料
国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)
大規模修繕にかかる費用はいくら?
大規模修繕には1部屋あたり約100万程度の費用がかかると一般的にいわれています。
下記の国土交通省の実態調査によれば、1部屋当たりの工事金額に関して「100~125万円/戸」の割合が最も高く27%、次いで「75~100万円/戸」が24.7%、「125~150万円/戸」17.4%となっています。
半数以上のマンションの大規模修繕工事費用は1部屋当たり75万~125万の範囲であることが理解できます。
国土交通省
大規模修繕工事の内訳について
実態調査によると、下記の図のように建築工事金額の内訳が記載されています。
令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(12頁)
全体的にみると、「屋根防水」「床防水」「外壁塗装」「外壁タイル」がその工事金額の大部分を占めているのが分かります。
回数別にみると、「シーリング工事」については回数を重ねるごとにその費用は徐々に少なくなり、「鉄部塗装」「建具・金物等」の割合に関しては徐々に増えているのが分かります。
また大規修繕の大部分を占める「外壁塗装」については回数を重ねるごとにその費用が徐々に大きくなっています。
大規模修繕の工事期間
規模によっておおよその工事期間が異なります。
- 小規模マンション(50戸未満)工事期間3~4か月
- 中規模マンション(50~100戸未満)工事期間4~6か月
- 大規模マンション(100戸以上)工事期間6~1年以上
大規模修繕計画の見直しのタイミング
大規模修繕は長期にわたる計画です。
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」によると、長期修繕計画の内容については5年程度ごとに見直すことが推奨されています。
建築技術や法令が5~10年程度で変わることが多いためです。
また、物価や資材の価格に変動があったりすればそれも織り込んで修繕計画を見直さなければなりません。
大規模修繕と修繕積立金は必ず確認
物件購入時も売却時も、必ず両方チェックしましょう。
新築ワンルームに関しては、新築当初の修繕積立金は安く設定している物件が非常に多いです。
また中古ワンルームに関しても、築年数のわりにやたらと修繕積立金が安かったり、築15年以上経過しているのにいままでに1度も長期修繕を行っていないような物件は要注意です。
いざ大規模修繕が必要となった際に、修繕積立金が十分に溜っておらず1部屋あたりに個別の負担金が生じるようなケースや、予想外に大きく修繕金が上昇していくケースも存在します。
投資用のワンルームマンションはオーナーがその物件に住んでいるわけではないため、管理組合の合意形成が難しい場合も多いです。
よって、中古ワンルームなどを購入する場合には修繕計画や直近の議事録、重要事項調査報告書などを参考にして「管理組合がキチンと機能しているのか」をしっかりと事前に把握することも大切です。
物件の総戸数にも要注意
大規模修繕工事費用はその物件の総戸数で按分することで、1部屋あたりの負担が決定します。
つまり、総戸数が少なくなれば、その分1部屋当たりの負担となる修繕積立金が高くなる傾向にあります。
そういった意味でも小規模のマンション(具体的には総戸数20室未満)の物件を購入する場合は注意が必要です。
また、金融機関の融資評価項目においても物件の総戸数は最低20室以上としている銀行が多いです。
つまり20室未満のマンションだと途端に融資の受けられる銀行が少なくなるということです。
融資の受けられる銀行が少なくなれば、購入する側もその分現金を多めに投入したり、その他の融資銀行を探したりで非常に苦戦しますから、その分価格が下がってしまうという傾向にあります。
- 修繕積立の負担金が割高になりやすい
- 融資を受けられる銀行が限定されやすい
以上の理由から総戸数20室未満の物件はお勧めできません。
修繕積立金の値上げは売却価格を下げる原因
修繕積立金が上昇すると、毎月のオーナーが受け取る手取り賃料はその分少なくなります。
つまり、収益性が低くなるということです。
ワンルームマンション投資の値段は基本的に「収益還元法」によって決まります。
その物件から得られる家賃収入(収益)で価格が決まるという考え方です。
収益が下がれば価格は低くなります。
修繕積立金の値上げ金額に対しての価格の下落額は東京都内の物件であればざっくり以下のような状況です。
都内の築浅ワンルームマンション(築20年以内)の平均的な実質利回りを約4%として計算しています。
例えば、
家賃80,000円、管理費8000円、修繕積立金2000円の物件があった場合。
その物件の価格は収益還元法に基づくと
(80000円ー8000円ー2000円)×12か月÷4%=2100万
となります。
しかしながら、この物件の修繕積立金が1000円上昇すると
(80000円ー8000円ー3000円)×12か月÷4%=2070万
となります。
つまり上記の表通り、毎月の修繕積立金が1000円上昇すると価格も30万下落するのが分かるかと思います。
まとめ
大規模修繕工事はマンションの価値を長期的に維持するために必須です。
しかしながら、工事費用の不足や修繕積立金の増額など工事に際して多くの課題がある場合も多いです。
場合によっては、それらの課題が残る前に物件を売却してしまうのも1つの手といえます。
そのためにも事前に大規模修繕の時期をチェックし、修繕積立金の値上げのタイミングを把握することが非常に重要になります。