海外不動産の購入による節税スキームがいよいよ終焉を迎えようとしています。
今回はそんな海外不動産による節税の仕組みについて詳しくお話ししていこうと思います。
目次
海外不動産投資による節税の仕組み
海外の不動産投資による節税の仕組みを一言で言うと、
「びっくりするくらい大きな経費を出して、とんでもない赤字の確定申告をする」
というものです。
- びっくりするくらい大きな経費ってどうやって出すの?
- なんで赤字で確定申告すると節税できるのか?
順番に見ていきましょう。
大きな経費の正体は「減価償却費」
この減価償却費は何も特別なものではなく、国内で不動産投資する際にも普通に経費として計上できます。
※減価償却費についてはこちらの記事でまとめています。
※また、ワンルーム投資における減価償却の出し方はこちらにまとめています。
⇒不動産投資のデッドクロスとは?黒字でも倒産する!一体なぜ?
日本国内の不動産はそもそも、「古くなれば徐々に価値が下がる」という概念です。
しかし、海外の不動産は一概にそうではありません。
アメリカを例に挙げるとするならば、基本的にアメリカ人が自宅を購入する際には「中古住宅」が主流です。
2017年度のアメリカの住宅市場の流通をみると、
- 82%が中古住宅
- 18%が新築住宅
という結果がでています。(出所:U.S.Census Bureau「New Residential Construction」「National Association of REALTORS」)
およそ日本と真逆ですね。
よって、中古市場の住宅流通が非常に活発であり、その分中古住宅の価値も高い訳です。
するとどうなるか。
築年数が経過した物件でも減価償却費を大きくとることが可能となるのです。
図にすると以下のような感じです。
家賃収入があれば勿論収入となりますが、それでも減価償却費の2000万の経費に比べれば微々たるものです。
とにかく、この減価償却費によって海外不動産投資で大きな赤字を作ることができるのです。
では、なぜ海外不動産で赤字になると、節税になるのか見てみましょう。
海外不動産の赤字と日本国内の所得を損益通算できる
損益通算。
難しい言葉ですが、意味は簡単です。
要するに「損失と利益を相殺できるよ!」ってことです。
不動産投資を既にやられている方ならば、周知の事実かと思います。
例えば、サラリーマンで年収1000万の人がいたとしましょう。
その人が不動産投資でマイナス200万の赤字申告をした場合。
年収1000万の所得金額から不動産の赤字200万を差し引いてもいいよ、ということです。
となれば当然収める税金も少なくてすみますから、その分が節税になるという仕組みです。
この節税効果は年収が高くなればなるほど効果を発揮します。
見て分かるように、日本は累進課税といって、年収が高くなればなるほど高い税率がかけられるようになります。
所得が4000万を超えると、所得税と住民税を合わせると55%も税金でとられてしまいます。
1憶稼いでも半分以上が税金です。
よって、例えば年収1憶の人が海外不動産を購入するとします。
減価償却を大きくだして、不動産所得で赤字2000万をつくったとしましょう、
そうなれば、国内の1憶の給与所得と赤字の不動産所得を合算することで、
1年間で2000万×55%=1100万
もの節税が可能となるのです。
減価償却期間が4年とするならば
1100万×4年=4400万(4年累計)
の節税となる訳です。
魅力的です。
しかし、ここにきて海外不動産投資の節税スキームに暗雲が。
海外不動産が損益通算できなくなる可能性がでてきた
政府・与党は海外の不動産への投資を通じた節税をできないようにする方針だ。今は高額な海外物件への投資で出る赤字と国内の所得を合算して税負担を減らせるが、この合算を認めないこととする。海外の不動産への投資は富裕層に多い節税策で、ほかの納税者との間で公平でない仕組みと判断した。与党の税制調査会で詳細を詰めたうえで、2020年度の税制改正大綱に所得税法の見直しを盛り込む。
日経新聞2019年11月26日 18:00
本来ならば収益物件を購入しているのに、減価償却などで大きな赤字を出し、不動産経営に取り組むというのは本末転倒だ!ということでしょうね。
少し前に流行った、一棟物件の消費税を還付するための
「自販機スキーム」
その自販機スキームが封じられたことによって新たに出てきた
「金売買スキーム」
も国税によって封じ込められようとしています。
海外不動産もそうですが、法の隙間や制度のゆがみを利用した節税スキームは徐々に淘汰される流れとなっています。
現在ではこのスキームはできません
追伸、現在ではこの海外不動産で多額の減価償却費を出して節税するというスキームは国税庁によって封じ込められました。
令和2年度の改正により、「個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は生じなかったものとみなす」が創設されました。
節税目的での不動産投資はお勧めできない。
不動産購入による正攻法での節税はもちろん可能です。
しかし、区分のワンルームをはじめ、大きく節税となるのは最初の数年だけです。
未だにワンルームでも高額所得者に対して「節税売り」をしているような業者も多くあるようですが、実際に提案内容を聞いてみると酷いものです。
不動産投資に関係のない架空の経費を出してシミュレーションしていたり、初年度の節税があたかも生涯にわたって継続するよう誤認させていたり。
安易に業者の言うことや提示されたシミュレーションを信用してはいけません。
「しっかりと学ぶ」
当たり前ですが、騙されない為にはこれしかありません。