家計の支出割合が多いのは「住宅ローン返済」です。収入があるうちは良いですが、退職後、年金等での生活でローンを返済していくには負担がかかります。何か軽減する方法はないのでしょうか?
今回は退職後のローン返済を軽減する方法についてお伝えしていきます。
住宅ローンの実状
住宅ローンは借り入れの金額も数千万円と多額になり、長期間で返済をするケースがほとんどです。35年ローンをメインに20年、30年、35年と長期の期間で返済をしていきます。借入時は家の購入のために先ずはローンをくむことに着目しがちなのですが、その後の返済についても考えておくことが重要です。特に退職後にもローン返済が残る場合、年金や預貯金等で返済することになりますので、家計が厳しくならないよう事前に対策を取っておく必要があります。
住宅を販売する側(不動産屋等)は、ローンがくめればお客様は家を購入することができるので、完済時の年齢などについてはあまり注視していません。実際には退職後もローン返済が続く契約にされているかたは少なくありません。
<例>
契約時年齢35歳→35年ローン→完済時70歳
契約時年齢40歳→35年ローン→完済時75歳
上記の例の場合、定年が65歳だとすると、その後、5~10年もの間、ローン返済が続くことになります。
退職後の返済
退職後の収入は公的年金、私的年金、退職金、預貯金等となります。住宅ローンの返済が残る場合は、毎月の支出はこれまでと大差ありませんので、支払いが年金等の収入で可能かどうかを確認しておくことが重要です。
その後の生活資金も必要になりますので、先ずは退職後にいくらのローン残債額があるのかを確認しておくと良いでしょう。
<例>
借入金額:4,000万円
借入期間:35年
金利:0.29%
毎月の返済額:100,165円
上記の例の場合、年間約120万円の返済額となります。退職後5年分でしたら600万円、10年分でしたら1,200万円が残債額となります。
お手持ちのローン返済表で退職時の残債額を確認することもできますし、住宅ローンシミュレーションなどで確認しても良いでしょう。
退職前にローン返済が終わっていると、その後の生活費の支出は上記の例の場合、毎月10万円は下げることができます。ローン返済額は支出の割合が高いので、事前に対策をとることで退職後の生活が安定します。退職後の家計の参考にしてください。
軽減する方法は?
退職後の支払いを軽減する方法はいくつかあります。働いているうちに繰り上げ返済をして返済期間を短くしたり、退職金で残債を繰り上げ返済されたりする方法です。
繰り上げ返済は早めに行うほうが軽減できる利息が多くなりますので、できるだけ手持ち資金に余裕がある時にはマメに繰り上げ返済しておくこともお勧めしています。また、金利が高い時期にくまれた住宅ローンを借り換えて返済額を下げるなども対策の1つです。ご購入の時期により異なりますので、借り入れ金利も確認してみてください。
退職金で全て完済してしまう方法も良いのですが、その後の生活資金も必要になりますので、退職後のキャッシュフロー表(お金の出入り)を作成して返済額を決めると良いでしょう。もちろん働きながら返済をするという対策もあります。
また、資産運用等で住宅ローンの返済をカバーしていくこともできます。現役時代のうちに年金保険などで積立をしておき、年金受取期間(例えば10年間など)の年金は住宅ローンの返済にあてるなどです。私的年金で支払いをカバーできるようにしていくこともお勧めしています。
家賃とは異なり、住宅ローンの返済はご自身でコントロールができます。早めの繰り上げ返済や退職金での完済、ローンの借り換えや私的年金での支払いなど様々な対策が取れますので一度、試算してみてください。
最後に
住宅ローンをくむ際に、ファイナンシャルプランナーや不動産屋さんが完済時の年齢を確認して頂けると、ご購入されたかたも安心だと思います。ついつい、家を買うことに着目してしまい、返済が何歳まで続くかは説明が足りないと感じております。
家計の見直し相談に来られるかたで、退職後も住宅ローン返済が続くかたは少なくありません。結婚の平均年齢も上がり、家を購入する年齢も上がっています。合わせてローンの完済年齢もあがっています。完済年齢が80歳というご契約も拝見したことがあります。実際にはローンがくめてしまうと、そのままご契約されてしまうケースがほとんどですので、ご契約後に「支払いができるか不安」ということになってしまいます。
退職後の収入や所有資産で返済できるのか、しっかりと購入時に確認しておきましょう。長期でのローンとなりますので、返済プランはとても重要です。本記事も参考にしていただければ幸いです。
筆者:藤井亜也(CFP/FP1級)