相続は人生のうち、何度も経験するものではありません。そのため、急な相続が発生したときに戸惑ってしまうことも多々あります。そもそも相続はしないといけないのでしょうか?
今回は相続の承認と放棄についてお伝えしていきます。
相続とは
まずは相続について確認しておきましょう。相続とは、相続人が被相続人(亡くなった人)から財産を引き継ぐことをいいます。相続は法律上で相続することが決まっている法定相続人への相続と、法定相続人以外への遺贈があります。
では相続人について確認しておきましょう。配偶者は常に相続人となります。そして法定相続人の第1順位は子ども、第2順位は直系尊属(父母、祖父母など)、第3順位は兄弟姉妹です。これは法定相続分の場合となります。
もう1つ指定相続分があります。遺言で各相続人の相続分を指定する相続です。指定相続分は法定相続分よりも優先されますので覚えておきましょう。遺言のほうが優先ということです。
参考:法務省ホームページ
自筆証書遺言は紛失や破棄されてしまうことも多く、問題視されていました。現在は法務局で保管してくれる制度がありますので、こちらも合わせてご確認ください。
- 制度の概要
遺言書は法務局において適正に管理・保管されます。
遺言書の保管申請時には民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて遺言書保管官の外形的なチェックが受けられます。遺言書は原本に加え画像データとしても長期間適正に管理されます。
▶遺言書の紛失・亡失のおそれがありません。
▶相続人等の利害関係者による遺言書の破棄,隠匿,改ざん等を防ぐことができます。
そして、相続人になれない人もいるので確認していきましょう。
・相続開始以前にすでに死亡している人
・欠格事由に該当する人
欠格(けっかく)とは、被相続人を殺害したり、詐欺や強迫によって遺言書を書かせたりすることです
・相続人から廃除された人
被相続人を虐待するなど、著しい非行があった場合に被相続人が家庭裁判所に申し立てることにより、その祖続人の相続権をなくすこと
・相続を放棄した人
では、相続人となった場合、必ず相続しなくてはいけないのでしょうか?
相続の承認と放棄
相続人は被相続人の財産を相続するかどうかを選択することができます。
1)単純承認
単純承認とは、被相続人の財産(資産および負債)をすべて承継することをいい、民法では単純承認が原則です。なお、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、このあとお伝えする限定承認や放棄を行わなかった場合には、単純承認したものとみなされます。
2)限定承認
限定承認とは、被相続人の資産(プラスの財産)の範囲内で、負債(マイナスの財産)を承継することをいいます。限定承認をする場合には、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、「相続人全員」で家庭裁判所に申し出る必要があります。
3)放棄
放棄とは、被相続人の財産(資産および負債)をすべて承継しないなど、相続人とならなかったものとすることをいいます。放棄をする場合には、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。
相続の承認と放棄はご自身で決めることができますが、限定承認は相続人全員での申し出が必要となります。
参考記事はこちら
代襲(だいしゅう)相続
代襲(だいしゅう)相続についてもお伝えしておきます。
代襲相続とは、相続開始前に相続人となることができる人がすでに死亡、欠格、廃除によって相続権がなくなっている場合に、その人の子(被相続人からみると孫、甥姪)が代わりに相続することをいいます。
祖父が亡くなり、祖母と子が相続人の場合で、すでに子がなくなっているときは、その子(祖父からみた孫)が代襲相続人となります。相続自体も予期できないことも多く、また、突然、代襲相続人になるといったケースもありますので、相続の基本は予め知っておくと安心でしょう。
最後に
冒頭お伝えした通り、相続は突然発生することも多く、また何度も経験するものではありません。そのため、突然のことに戸惑ってしまったり、判断を誤ってしまったりすることもあります。事前に相続についての基本を知っておくことで、落ち着いて相談ができたり、対策を考えたりすることができます。
また、相続税の計算は税理士さんでないと行えませんが、事前の相続対策などはFPが対応することも可能です。相続について、少し心配だな、と感じられたら専門家に相談しておくと良いでしょう。相続の承認と放棄はご自身で決められますが、限定承認は相続人全員と申請しなくてはならず、時間がかかります。
家庭裁判所に申し出る期間も決められておりますので、慌てずに相続人同士でご相談いただければと思います。その際、税理士など専門家も交えると意見がもらえたり、ご相談がスムーズに行えたりすることもあります。本記事も参考にしていただければ幸いです。
筆者:藤井亜也(CFP/FP1級)