相続で物納できるもの?できないもの?事前準備で対策を

相続は突然、発生することも多く、対策をしていないと相続税の納付に戸惑ってしまうことも。現金納付ができない場合、物納となるのですが、物納できる資産も限られています。事前に知っておくことで、資産の見直しにも役立ちますので、物納できる資産について確認しておきましょう。

今回は相続税の物納についてお伝えしていきます。

相続税の納付期間

冒頭お伝えした通り、相続は被相続人の死亡により発生しますので、予期せず突然、発生することも多々あります。事前に相続対策ができていれば良いのですが、何も対策ができておらず、相続税の支払いが発生することも。先ずは相続税の納付期間や申告について確認しておきましょう。

 

  • 申告の期限と方法

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10カ月以内に行うことになっています。

<例>

1月6日に被相続人が死亡した場合、その年の116日が 申告期限になります。

 

10か月と聞くと、余裕があるかな、と思われがちですが、遺言がない場合は遺産をどのように分割して相続するかを相続人同士で協議するのにも時間がかかります。所有する不動産を売却する場合も10か月では時間が足りないこともあります。相続税の納付が必要な場合、基本的には現金納付となりますので、株を売却したり保険金を申請したりと、さまざまな手続きが必要です。

現金納付が困難な場合は、物納といって所有資産で納付することも可能です。しかし、物納できる資産は限定されていますので、予め確認しておく必要があります。

物納できるもの

相続税で物納できるものは、国税庁のホームページに掲載されています。

  • 物納できるもの

物納申請財産は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、日本国内に所在する次に掲げる財産および順位(1から5の順)となること。

<第1順位>

1.不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等

(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。)

2.不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

 

<第2順位>

3.非上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。)

4.非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

 

<第3順位>

5.動産

 

(注1

後順位の財産は、税務署長が特別の事情があると認める場合および先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って物納に充てることができます。

 

(注2

特定登録美術品については、上記の順序にかかわらず一定の書類を提出することにより物納に充てることができます。

 

物納に充てることができる財産は、物納に不適格な財産(管理処分不適格財産)に該当しないものであることおよび物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと。

物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること。

債券や株式の評価額を確認するには、さほど時間はかかりませんが、不動産や動産の場合は評価額を算出するまでに時間がかかります。物納の申請をするにも余裕をもって行う必要があります。物納できないものも確認しておきましょう。

物納できないもの

  • 物納に不適格な財産(管理処分不適格財産)<例>

①不動産

イ:担保権の設定の登記がされていることその他これに準ずる事情がある不動産

ロ:権利の帰属について争いがある不動産

ハ:境界が明らかでない土地

 

②株式

イ:譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていない株式

ロ:譲渡制限株式

ハ:質権その他の担保権の目的となっている株式

 

不動産や株式でも条件に満たない場合、物納することができません。所有している財産の内容をしっかりと確認しておくことが重要です。

相続対策のおさらい

相続対策はいくつもありますが、基本的な対策を行っておくことで、突如の相続時に戸惑うことなく対応することができます。相続対策をおさらいしておきましょう。

 

  • 相続対策<例>

① 遺産分割対策

② 節税対策

③ 納税対策

 

遺言がある場合は、基本的には遺言通りに遺産分割されますが、遺言がない場合、相続人同士で話し合うことになります。事前に相続について話し合われておかないと、いざ、遺産を分割するとなったときに揉めてしまうこともありますので、できれば事前に相続について話し合われたり、遺言を用意されたり、対策をしておくと良いでしょう。

資産を現金で所有していると、現金そのものに税金がかかります。不動産や保険など、評価額が軽減できる資産や、控除等がある資産に変えておくことで節税対策となります。

そして今回お伝えした納税です。相続税の納付が必要な場合、現金もしくは物納で納めなくてはいけません。所有している資産の内容を確認しておきましょう。

資産の見直し

節税対策、納税対策を考慮して、資産の見直しをしておくこともお勧めしています。ある程度、どの資産を誰に相続させるかが決まってきたら、より節税につながる資産に組み替えておいたり、納税資金を準備しておいたりと、相続対策を事前にしておくと安心です。

物納できない資産もありますので、事前に所有している資産の内容を確認しておくことも重要です。

最後に

現金は少ないけれども、不動産や株式を持っているので、相続も何とかなるだろう、とお考えのかたも少なくありません。いざ、ふたを開けてみたら、売買できない不動産であったり、株式も条件に満たしていなかったり、と納税対策ができないケースもあります。

事前に所有資産を確認しておくことで、そうしたトラブルも回避することができます。今回お伝えした物納について、その内容を確認しておき、所有資産の見直しや相続の際に役立てて頂ければと思います。

 

 

筆者:藤井亜也(CFP/FP1級)