不動産の3つの相続「現物」「換価」「代償」を解説

日本人が所有する資産の多くは不動産と現金・預貯金です。

相続が発生した場合、現金などは分割しやすいのですが、

不動産となると分割しにくくなります。相続人が複数いるときは、どのように分割すれば良いのか、悩ましいところです。

今回は不動産の相続、3つの分割方法についてお伝えしていきます。

相続の法定相続割合

相続人の範囲をおさらいしておきましょう。死亡した人の配偶者は常に相続人となります。配偶者以外の人は、下記の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

 

1順位:死亡した人の子供

2順位:死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)

3順位:死亡した人の兄弟姉妹

 

法定相続分は以下のとおりです。

・配偶者と子供が相続人である場合

配偶者2分の1

子供(2人以上のときは全員で)2分の1

 

・配偶者と直系尊属が相続人である場合

配偶者3分の2

直系尊属(2人以上のときは全員で)3分の1

 

・配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

配偶者4分の3

兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)4分の1

 

なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。前述の通り、現金であれば均等に分けることが容易にできますが、不動産の場合は

簡単に分けることができません。どのように分割したら良いのか、次の3つの分割方法を確認していきましょう。

3つの分割方法

不動産などの分割方法には、「現物分割」「換価分割」「代償分割」の3つがあります。

 

  • 現物分割

遺産を物理的に複数の相続人で分ける方法です。土地の名義を兄弟で1/2ずつに分けたり、土地を分筆して、それぞれが土地を所有したりなど方法はいくつかあります。

 

  • 換価分割

遺産を第三者に売却し、その代金を相続人間で分ける方法です。実家などが遺産として相続される場合、既にお子さまたちも家を所有しており、実家は使わない場合があります。そうした場合は不動産屋に売却を依頼し、売却で得た費用を相続人で分けるという方法です。

 

  • 代償分割

一部の相続人に遺産の現物を取得させ、それ以外の相続人が遺産現物を取得した相続人から代償金を受け取るという遺産分割の方法です。例えば、実家で暮らす長男が不動産(実家)を相続し、他の相続人(次男や長女など)に代償金を支払うといったケースは良くあります。

 

現物分割と換価分割はイメージしやすいと思いますので、代償分割について、もう少し詳しく確認していきましょう。

代償分割について

国税庁のホームページには、代償分割について詳しく掲載されていますので合わせて参考にして下さい。

 

  • 概要

代償分割とは、遺産の分割に当たって共同相続人などのうちの1人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合に行われる方法です。

遺産となった不動産を使わない場合は、換価分割で売却をして現金で分けるのがシンプルな方法ですが、不動産を使う、もしくは残したい場合は、現物分割か代償分割となります。

現物分割の場合、土地や家の所有者が複数になることで、その後、売却などがしづらかったり、所有者の相続が発生して名義人(所有者)が変わってしまったり、といったデメリットがあります。その為、不動産を残したい場合は代償分割が検討されることが多々あります。

一部の相続人に遺産が相続されてしまうことで、他の相続人の反対にあうことも想定されますので、きちんと代償金を準備し、分割していくことが重要になってきます。

代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算も確認しておきましょう。

 

<具体例>

相続人甲が、相続により土地(相続税評価額4,000万円)を取得する代わりに、相続人乙に対し現金2,000万円を支払った場合

 

1)甲の課税価格

4,000万円 - 2,000万円 = 2,000万円

2)乙の課税価格

2,000万円

 

不動産の代償分割が考えられる場合は、事前に不動産の評価額などを確認しておき、代償金なども試算しておくと良いでしょう。

争続にならないように

先ずは、法定相続割合を確認しましょう。本来は誰がどの割合で遺産を相続できるのかを把握することが大切です。その上で、遺産をどのように分割していくのかを相続人同士で相談していきます。(遺言書がある場合は、遺言書が優先されます)

不動産のように分割しにくい遺産がある場合は、今回お伝えした3つの分割方法を検討します。相続人同士で、遺された大切な遺産をどう継承していけば良いのか、話し合っていきます。不動産の売却などには時間がかかりますので、その点も注意が必要です。相続対策など、生前に行える場合は、遺言書で遺産分割について残しておくと安心です。相続人同士で不公平感が出てしまうと、争続になってしまいます。できるだけ、争う火種を作らないよう事前に対策をしておくと良いでしょう。

 

  • 相続対策<例>

・遺産分割について話し合っておく

・所有資産を把握しておく(評価額など)

・代償金の準備、納税対策

・遺言書の作成

・家族に意思を伝えておく(エンディングノート等の活用)

相続における宅地や建物の評価方法

所有資産や相続人の数によって、相続対策の内容も変わってきます。ご自身の家族の場合を想定して、事前に対策できることから進めておくと安心です。

最後に

不動産も大切な資産です。できる限り、相続人が有効に活用できる方法を選択して欲しいと思います。3つの分割方法はそれぞれのメリット・デメリットがありますので、先ずは相続人同士での話し合いで、どのようにしていきたいのか、確認しながら分割方法を検討してみて下さい。

相続は突然発生することも多く、相続人も戸惑ってしまいます。相続対策として、事前に所有資産を把握したり、評価額を調べておいたりすることで、代償分割の際も役立ちます。

何事も元気なうちに、早めに行っておくことをお勧めしています。最近、相続のご相談が増えてきました。遺されたご遺族が困らないよう、事前の対策は重要です。本記事も参考にして頂ければと思います。

 

 

筆者:藤井亜也(CFP/FP1級)