日本の相続税の税率は高いため、皆さん気になるところだと思います。全ての資産に税金がかけられては、遺された遺族の生活が困窮してしまうことも考えられますので、資産によっては非課税枠があります。
今回は相続税の非課税枠についてお伝えしていきます。
相続税とは
先ずは相続税がどのくらいなのかお伝えしておきましょう。
遺産総額から非課税財産、葬式費用、債務を差し引き
残りの遺産額に対して課税がされます。この後、詳しくお伝えする基礎控除なども差し引けますので、それらを差し引いた「課税遺産総額」に税率が掛けられます。
- 相続税速算表
参考:国税庁のホームページ
1番税率が低い1,000万円以下でも税率は10%なので、例えば課税される遺産が900万円でしたら90万円の相続税となります。2,000万円でしたら税率が15%、控除額50万円なので計算式は2,000万円×15%-50万円となり、相続税は250万円とかなりの金額になってきます。
相続税の非課税枠とは
では、非課税枠にはどのようなものがあるのか確認していきましょう。
- 基礎控除
先ずは、基礎控除です。相続税の基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。法定相続人になれるのは配偶者と一定の血族だけです。配偶者は常に法定相続人になれますが、血族は次の順で決まります。
第一順位:子や孫
第二順位:両親や祖父母(両親が二人ともいないときに祖父母が相続人になる)
第三順位:兄弟姉妹や甥姪
<例>法定相続人が妻(配偶者)、子ども3人の場合
3,000万円×(600万円×4人)=5,400万円
例の場合、相続する財産が5,400万円以下であれば相続税の支払いはないということになります。
- 墓地や仏壇など「宗教的な財産」
宗教的な財産で、法事やお彼岸などでお参りしたり、毎朝手を合わせたりするようなものには相続税はかかりません。
<例>
墓地、墓石、仏壇、仏具、仏像
神棚、神体、神具、位牌
- 公益法人への寄附
相続した財産を国や地方自治体、公益法人や認定NPO法人に寄附をすると非課税になります。お世話になった学校や、支援したい団体などに寄付をするかたも多くいらっしゃいます。
<例>
独立行政法人、国立大学法人、公立大学法人
公益社団法人、公益財団法人
社会福祉法人、日本赤十字社
私立学校法に規定する学校法人の一部
- 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠
「500万円×法定相続人の数」
人が亡くなると、遺族に生命保険金が支払われたり、故人の退職金を家族が受け取ったりします。こういったお金は「人の死を機に受け取るお金」です。そのため相続税法上、相続財産とみなされ、相続税がかかります。
しかし、こういったお金は遺族の生活に必要なものでもあります。そこで相続税法では「500万円×法定相続人の数」という非課税枠を設けています。例の場合、500万円×4人=2,000万円が非課税となります。
参考記事はこちら
相続対策に役立てよう
ご夫婦どちらかが亡くなってしまい、配偶者とお子さまなどに相続が発生するのが一次相続となります。その際は、配偶者がいますので配偶者控除を受けることができます。
配偶者控除(配偶者の税額の軽減)とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額
配偶者がいる場合、相続財産が1億6千万円以上の場合は相続税が発生しますが、それ以下であれば相続税はないということになります。多くの財産を配偶者に相続させることで相続税を軽減することにつながります。
しかし、二次相続の場合、配偶者はいませんので、お子さまなどの人数によっては相続税がかかるケースも増えてきます。不動産などの評価額にもよりますが、都市部にお住まいの場合、二次相続では相続税がかかってしまうケースも多々ありますので、相続税の納税対策も考えておく必要があります。
納税が必要な場合は、生命保険の死亡保険金で準備しておくことで、非課税枠もあり、かつ納税資金も準備することができます。納税対策をしておくことで、相続する側も相続される側も安心材料になるでしょう。
最後に
相続は予期せぬ場合が多いため、遺された遺族も戸惑ってしまうことが多々あります。一生のうち、相続を経験する回数は皆さん数回と少ないので、情報や経験も少なく戸惑うことは当然のことです。
相続対策として、事前に相続税が発生するのかを試算しておくと良いでしょう。非課税枠を確認しておくことも重要です。もし、相続税が発生しそうな場合は現預金や生命保険等で納税対策をとっておくと安心です。意外と非課税枠をご存知ないかたもいますので、相続対策に役立てて頂ければと思います。
筆者:藤井亜也(CFP/FP1級)