円安や物価上昇が進み、私達の生活にも影響が出続けています。
食料品やガソリンの高騰は家計を圧迫してきますが、それをカバーするだけお給料が上がれば良いのですが、それも難しい状況です。
これまで家庭を支えてきた主婦・主夫のかたがパートやアルバイトでお仕事をする際、気になるのが「年収の壁」です。
そもそも年収の壁とは何か?という基本的なところから、メリット・デメリットに至るまで分かりすくお伝えしていきます。
年収の壁とは
本来、年収に「壁」という概念はないのですが、その金額を境に税金や社会保険などが変わる為、「壁」と表現しています。
いろいろな壁があるのですが大きく分けると「税金」と「社会保険料」の2種類となります。
混同しがちなので、詳しく確認していきましょう。
●税金に関わる壁
100万円の壁:およそ100万円前後を超えると、自身で住民税を納める必要が出てきます。
103万円の壁:年収103万円を超えると、自身で所得税を納める必要が出てきます。
150万円の壁:年収150万円を超えると、配偶者特別控除の控除額が減り始めます。
201万円の壁:年収201万円を超えると、配偶者は配偶者特別控除を受けられなくなります。
●社会保険料に関わる壁
106万円の壁:年収106万円を超えると、自身で社会保険料を納める必要が出てきます。
130万円の壁:年収130万円を超えると、扶養を外れ自身で社会保険料を納める必要が出てきます。
色々な言葉が出てきましたので、整理していきましょう。
まず、税金に関しては年収により「住民税」と「所得税」の支払い義務が生じます。
そして、社会保険料に関しては年収によりご自身で納める必要が出てきます。
また、控除や扶養という言葉も出てきました。
家計の中心者は家族を扶養(*1)している場合、配偶者控除や配偶者特別控除が受けられます。
給与から様々な控除をひいて、残りの金額に税金が課せられますので、控除があるイコール節税につながるということです。
扶養していたかたが収入を得るようになると、ご自身で税金や社会保険料を支払いますので、この控除額も減ったり、なくなったりすることを懸念されるかたも少なくありません。
しかしながら、働くことで収入は増えますし、様々なメリットもありますので確認していきましょう。
(*1)扶養とは:自身の稼ぎで生計を立てられない家族や親族に対して、経済的な援助を行うことを言います。
壁を越えて働くメリット・デメリット
たくさん働くと税金を支払わないといけない、配偶者控除がなくなってしまう、などネガティブな印象があるので「壁」と表現されているのかもしれません。
ああしかし、壁を越えて働くメリットもありますので確認していきましょう。
●メリット
- 収入が増える
- 社会保険加入により自身の年金額が増える
- 失業した際の基本手当や、育児休業給付、介護休業給付などの保障が受けられる
- 世帯収入が増えることで、住宅ローン借入れなどにプラスの効果がある
●デメリット
- 税金や社会保険料を支払う分、手取りが下がる可能性がある
子育て中やご自身の体調、介護など働ける時間に制限がある時は壁の範囲内で無理なく働き、働ける環境が整った際は、壁を気にせず働くことでご自身の年金額アップや保障という安心材料が増えますので、生活環境に合わせて変えていくこともお勧めしています。
また、家計の中心者の控除が減ってしまったり、なくなってしまったりすることを心配されるかたもいるのですが、家計の中心者ご自身が他の控除を増やすことでカバーすることもできます。
例えば、保険に加入することで保険料控除が受けられたり、確定拠出年金で拠出額が控除されたりする等です。
壁だけを気にするのではなく、家計や将来のことを全体に考えて働き方を選択して欲しいと思います。
新たな制度について
政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」と題して、パートやアルバイトのかたが年収の壁を意識せずに働ける環境づくりを後押しする施策を発表しました。
(参考URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html)厚生労働省HPより
令和5年(2023年)10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始しましたが、対応については各企業において事業主が労働者と話し合い、ニーズを踏まえて決めていくことになります。
既にお仕事をされているかたは勤務先に、今後、お仕事をされるかたは就職する先の企業に「年収の壁」に関する対応を検討しているか確認して下さい。
最後に
年収の壁を気にされてご相談に来られるかたのほとんどが「仕事をしたい」と考えています。
そこに税金や社会保険料、配偶者控除などのデメリット部分を気にしてしまい、躊躇されているケースが多く見受けられます。
メリット部分は将来の年金額や様々な保障など、今すぐに目に見えることではないのですが、確実にご自身のプラスになることばかりです。
現在だけでなく、将来のことも考慮して働くことを検討して頂ければと思います。
筆者:藤井亜也(CFP/FP1級)